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PAオペレートに対する考え方

ライブハウスは音では選ばれていない実態

私こと、これを書いている村田は、JAM SESSIONの店主であり、当店のライブの時のPAオペレーターでもあります。
うちのライブの音作りは、今のところ私の腕と頑張りで、決まります(笑)。

ここでは、私が普段PAオペレートに関してどの様な思想を持っていてどの様に実際の操作をしているのか、ということをお話しできればと思います。

 

私は個人的には、PAオペレートってライブの良し悪しを左右する、結構大きな要因の1つだと思っています。
そんなの当たり前だろ、って、思います?
本当に、そう思います?

 

だったらなぜあなたは、結構テキトーなオペレートしかしていない様なライブハウスで、ライブをやっているんですか(苦笑)?
ネームバリューとか、ブランドとかですか?
広くて、ステイタスがあって、そこでライブをやると見栄を張れるからですか?
店長さんやブッキングマネージャーさんと、仲がいいからですか?
「音がいい」と、「誰か」が言っているからですか?

 

正直、うちのお客さんとか音楽友達とか色んな方のライブを観に、色んなライブハウスに行きますけど、まともにPAオペレートをしているところは少なめな印象です。
皆さんまず、音の良し悪しでは、出演するライブハウスを選んでないなぁ、というのが素直な感想です。

 

まぁ、いいんです。
音じゃないなら、それはそれで。

 

うちなんかどれだけ音をよくしようと頑張っても、あんなショボいところじゃライブなんてできない、って思われていますので。
音とかじゃなく、大きくて有名なところでやることで見栄を張れることの方が大事な人も、たくさんいるんです。
というか、普通はそっちの方が大事なんだと思います。

 

音の実質の部分でがんばるしかない弱商店

逆にうちは、会場も小さいし歴史もないしブランド力もない、だから、「音」という実質の部分で頑張っているし、そこで頑張るしかないのです。
楽器メーカーが、立ち上げ時には良質の楽器を一生懸命作って、売れ始めたらこれまでよりもちょっと質の低いものを大量生産して高値で売っていく、というのを想像していただければわかると思います…(笑)。

 

そして別の記事でも書いてますが、ライブハウスの音が良くない原因は、まず、PAさんが出演者とコミュニケーションを取ってないから、ということです。

 

私も楽器をやります。
バンドもたまにやります。
そのバンドで、他店でライブをやることもあります。

そしてそのライブの時のリハで、PAさんが何も言ってこないことが多いです。
バンド全体の音のバランスが悪くても、何も言ってこない…。
音のバランスが悪いのは、対バンさんの演奏を見ていて、わかります。
こんなひどいバランスでもPAさんはバンドさんに何も言ってこない、きっと我々の演奏もひどい状態なんだろうなぁ、でもPAさんは我々にも何も言ってこない。

 

他の記事でも書いてますが、何も言ってこない理由は何だと思いますか?

それは、出演者には「オレはお客様だぞ」という態度の人が少なからずいて、「ギターさん、音がデカいので下げて下さ〜い」なんて要請しようものなら反発されるから、です。
わざわざ不穏な空気を作りたくはないから、PAさんは何も言いたくないんです。

 

昔だったらPAさんの方が立場が上だったってこともあって(苦笑)、「下げろ」とか「上げろ」とか結構ガンガン言ってきたと思うんですけど、今は出演者が会場使用費を払って「使ってやってんだぞ」っていう時代でして、その人は自分的には「お客様」なので、何か言われるとプライドが許さないという人が多いんですね。

だから、不要なトラブルを避けるために、音のバランスが悪くても何も言わないPAさんばかりになってしまったんです。
でもこれじゃ、まともな音作りなんてできる訳ないんですね。

 

そして残念ながら、人間の耳なんてかなり曖昧でして、音のバランスの良し悪しがわかる人が、割合としてかなり少ない。
だから、テキトーなオペレーションでも、みんな気づかないんです。
そして、誰かが「あそこは音がいい」と言ったのを聞いて、自分ではそれを感知できていなくても「あそこは音がいい」ということにしてしまうんですね。

 

ラーメン屋の行列に並んでる人のほとんどが、実はラーメンの味なんてそれ程わかってない、っていうのと同じ現象です。
みんなが並んでるから、自分も並ぶ。
みんながいいと言っているから、きっといいんだろう、自分ではわからないけど。
ってな感じで…。

 

ちなみに、これらの話って、テキトーに決めつけてるんじゃないですよ。
人間の味覚がいかに曖昧かは、色んなブラインドテストで実証されているんです。
美味しいんだよ、と事前に情報が与えられているものを、皆さんおいしいと言うんですね。

 

耳も、そうです。
音がいいんだよ、と事前に情報が与えられているものを、皆さん音がいいと言うんですね。
プロからすればわかることも、そうじゃない人にはずいぶんと曖昧にしか感じられてないんだなぁ、っていうのはいつも感じているんです。

人は他人の行動を模倣する、というのは科学的に証明されているんですね。
なかなか自分では判断していないんです。

 

まぁ大事なのが音じゃないとすれば、うちの店がいかに音を良くしようと頑張ろうとも、全く意味がないと言えばないですね(苦笑)。

 

ただ、私が言いたいのは、私は常に真摯に音作りをしており、そこにはテキトーにやる的な「裏切り」は絶対にないんだよ、ということなんです。
人から見られていなくても私は盗まない、的な話です。
100万円落としても返ってくる日本、そういう正直さを、私はいつでも絶対に提供しているんですよ、ということです。

 

まぁそれも、そもそもそんなの要らねーよ、って思われていたら結局は意味ないんですけどね(苦笑)。

 

 

うちの店はボーカルとギターソロがちゃんと聞こえる様に

そして話は何も「テキトー」だから、ばかりじゃないんですよ、音のバランスが悪い原因は。
実際にオペレートしているそこのPAさんの考え方、もしくはPAさんに指示を出している人の考え方に由来するものも、あるんです。

 

まぁロック系の話なんですが、ギターの音に対する考え方、っていうのが影響している場合があるんです。

ロック系の曲って、ギターのリフが印象的なものが多いんですね。
バンドの中でも、ギタリストがその曲の作曲をしている割合もかなり高いので、ギターのリフから作りました、この曲はこのリフだからいいんです、っていう曲ばかりだったりします。
イントロとかもギターのリフがかなり重要で、このギターリフが流れてきたらこの曲だ〜〜、ってすぐにわかる、みたいな。

 

だからね、ギターの音を上げがちになるんですよ。
印象的なリフを、聞かせようとする、聞こうとする、んですね。

 

だから、まだギターの音量を上げても大丈夫、みたいな感じで、ギターの音を目一杯飽和させようとするPAさんとか、PAさんに指示を出している店長さんとか、イベンターさんとかが、少なからずいるんです。
その結果、ギターの音が爆音気味になってしまう。
その結果、ボーカルがイマイチ聞こえない…と。

 

でもね、私から言わせればギターの音って、飽和させる必要なんて全くないんですよ。

歌ものの場合は、歌がメインなんです。
ギターは、あくまでも伴奏に過ぎないんです。
だからギターのリフをしっかりと聞かせるよりも、歌がちゃんと聞こえる様にしましょうよ!

っていうのは、あくまでも私の思想なんですが、そう思っているということを皆さんに知ってもらいたい!
村田というPAオペレーターが、どの様な思想でオペレートしているのかっていうことです。

 

正解不正解じゃないです。
そこは思想の違いです。
ギターの音を飽和させたい人と、歌がしっかりと聞こえなければ意味がないという私とでは、違う結果が出るんです。

 

イントロはね、確かにギターが飽和していてもいいんですよ。
まだ上げられる、もっとギターを上げて!ってのでも。

でもね、その音量のままだと、確実にボーカルが消えますよね、っていう話です。

 

そのバンドの専属のPAさんとかで、どこまでがイントロでどこから歌が始まるのか、どこで歌が終わるのか、曲のサイズは、とかを全部把握できている場合は、イントロを飽和させてもいいんですよ。
歌のアリナシでタイミングを見計らって、ギターの音量をPA側で上げ下げすればいいんですから。

でも、ブッキングライブなんかの場合だと出演者がドンドン変わるし、そのバンドの専属でもないPAさんはその演奏曲がどんな曲かも把握してないし、って時は、タイミングよくギターの音量なんて変えられる訳ないんですよね。

だから、ギターソロとかじゃない限りは、音量をそのまま放置なんですよ。
イントロも歌のところも、音量は一緒、PA卓の操作はしない。

 

だとしたら、歌が聞こえることを優先して、イントロの時点でギターリフの音量が飽和してないのは、仕方がないですよね、っていうことです。
ギターの音量を同じままにして歌が聞こえる様にすると、イントロのギターの音量的にちょっと物足りなくなってしまうというのはあります。

でもここを、もっと上げられるからギリギリまで上げる、とやってしまうと、歌がはじまった時に歌が聞こえないってことになってしまいますよね。

 

 

私も元はギタリストなんです

私もね、元はギタリストなんですよ。
しかも、元メタル好きの(笑)。

だから、ギターのリフが大事だってこともわかってます。
ギターのリフ、好きです。
自分だけなら、爆音で弾きたいです。

 

ですが、自分が歌もののバンドでライブをやる時は、ギターのリフよりも歌の方が大事だって思っているし、自分のリフなんて歌の伴奏でしかないんだからガッツリ聞こえる必要なんて全くない、って思っていますよ。
その代わりギターソロは大事なので、ガッツリ音を出したいです。

 
そこら辺がわかってないPAさんがいたりするので、伴奏は小さく、ソロは大きく、と指示を出すこともあります。
そうしないと、歌が聞こえないくらいにギターがうるせ〜のに、ギターソロ始まったらソロが聞こえね〜、ってなことになるからです(ソロの時は単音だから音量が減る)。

 

実際に他店で聞くのは、そんなライブだらけです(笑)。
ギターのバッキングがデカすぎて歌が聞こえないのに、ソロは音が小さすぎて何弾いてるかわからない…。
PAさん、結構なお金とっておいてそれですか、と。

 

だからさ、ギターの音を飽和させ過ぎなんだってば!!
それに対するソロの音量が、全く足りてないんだってば!!

 

って、自分では思うんです。
思想の違いではあるけれど。

 

そこら辺の音のバランスの話って、皆さんはどう思いますか(笑)?
まぁ、わからない人にはわからないから、気にもならないのかな。
私は、気になって仕方がないです。