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ライブハウスの集客とノルマ制

2009年に書かれている、どなたかの記事があります。
「集客はライブハウスがせよ!」的な内容です。

この記事を書いているのが誰なのかわかりませんが、ミュージシャンなのかなんなのか、とにかく演奏する側の人みたいですね。
ニューヨークで演奏していたことがある的な。
まぁ、お時間ありましたら読んでいただきたいです。
http://ugayaclipping.blog.so-net.ne.jp/2009-07-23-10

ニューヨークじゃ演奏すればギャラをもらって当然、なのに日本のライブハウスはミュージシャンから金を取るとはけしからん、というノルマ制を批判する内容です。
ライブハウス経営者は「『おれたちはミュージシャンを育てている』『音楽シーンをつくっている』なんてエラソーなことぬかす」ということですが、そんなことぬかしてるライブハウス経営者って、今時いるのかしら…(笑)?

ちなみにこの記事を書いたことの派生で、「ライブハウスはミュージシャンなんて育てない」という記事が存在しております。

 

ライブハウスはホールレンタルでしかない

普通に考えると、今や日本のライブハウスというのは、ホールレンタルでしかない訳ですよ。
ライブハウス側は上記のようなことを「エラソーにぬかす」こともなく、単にお金とって会場を貸しているだけです。

それがダメだと言いたいみたいですけど、別にダメでもなんでもなく、ホールレンタルなんです(言い切る!)。

それでいいじゃない!
それを時代や社会が求めているんだから。
それがマーケットというヤツですよ。

かつての「正しい形」をいまだに求める、もしくは外国はこうなんだから日本もそれに倣うべき、的な話は無理でしょう。
今の日本は言ってしまえば、ライブハウスがあり過ぎなんです。
結局、ライブを観に行きたい人口よりもライブハウスの収容人数が大幅に上回ってしまっているということです。

 

ライブハウスは需要の結果として増えた

80年代とか90年代とかの実数はよく知りませんが、ライブハウスが今よりも少なかった時代は、ライブハウス自体が集客できていたろうし、ライブハウスがミュージシャンを育てていたと思うし、ミュージシャンもプロを目指してライブハウスと真摯に向き合っていたんでしょうねぇ…。

でもたぶん2000年代のmixiの出現のおかげで、80年代に青春を送ったバンドブーム時代の人たちが音楽活動を再開、それによりバンド人口が急激に増大、それに伴いその人たちの発表の場としてのライブハウスが多く必要となり、ついには観客が求める以上にライブハウスの数が増えてしまった。
…のではないか、と思います。

そういうバンドブームの経験者であるアマチュアの人たちは、やってることは単なるコピバンだし、自分たちのバンドのファンなんている訳ないし、集客力も当然ありません。
そんなバンドにノルマもなしで演奏させてくれるライブハウスなんて、普通ならないですよね。
店側が、そんなアマチュアの人のために集客するなんて、あり得ませんから。
だから、彼らがライブをするためには、お金を払ってでも会場を借りるしかないんです。

これが、ノルマ制が成り立つ理由です。
ライブをしたければ、お金を払って会場を借りろ、ということです。

そういう人たちは、ライブハウスに育ててもらう必要もなく、ただ単に自分たちの楽しみのために、ライブハウスを使うんです。
カラオケと、同じ仕組みです。
歌いたいから、お金を払って歌う…ただそれだけです。
だから、「『おれたちはミュージシャンを育てている』『音楽シーンをつくっている』なんてエラソーなことぬかす」ライブハウスは、必要ないんです。
そういうライブハウスは、過去の存在です。

 

欧米人とは文化が違う

ついでに言うなら、欧米人がライブを観たがるのに対して、日本人はライブを観たくない国民性だということです(笑)。

これ、すごく大事なことです。

うちも営業してて音が外に漏れていると、欧米系の方がフラリと入って来ることがあります。
ところが日本人はというと、もちろんライブが好きな人が音に釣られて入って来ることも極々稀にありますが、ほとんどないですね。
欧米人はよく来る印象ですけど、日本人は基本的には来ないと思っていでます。

直接の知り合いで音楽をやっている人に聞いてみても、「音が鳴っているとうるさいから行きたくない」とのたまいます。
自分自身もバンドをやっていて自分のライブには来てくれ来てくれと言うくせに、知り合いでもない人間が演奏していると「うるせー」と…。

欧米人は生活の中に音楽があって、音楽が鳴っていれば誰が演奏していようと、楽しそうだから聴きたい。
日本人は生活の中に音楽ははなくて、知らない人のライブは雑音(もしくは騒音)でしかないから、聴きたくない。

なんですよ。

アメリカ人に聞いたんですが、あちらでは飲みに行く時に、日本人が「焼き鳥行く?刺身系行く?」って聞くのと同じ様に、「ライブ観に行く?」っていう選択肢が、普通にあるらしいです。

日本人で、「ライブ観に行く?」ってってなったら、「え?誰のライブ?」ってなるでしょ?
音楽を聴くというのは生活にはなくて、有名人の誰々のライブなら観に行く、知らない人のライブは観に行かない、なんですよ。
音楽そのものは聴いていないんです。
有名人なのか、有名でない人なら付き合いでライブを観に行くだけか、なんです。

文化の違い、ですな…。

 

市場の原理 市場の要請 その結果

この、ライブをやりたい人たちの増大と欧米とは違う文化との2つ合わせた結果として、ライブハウスがミュージシャンにノルマを課してお金を吸い上げる、という「ニューヨークとは違う」システムができ上がったに過ぎません。

「けしからん論者」の中には、そんな形でしかライブハウスを経営できないなら止めちまえばいいとか、簡単に「エラソーなことぬかす」人もいるんですけどね(笑)。
もしノルマ制が間違っていると言うなら、お客さんの側に「もっとライブを観る習慣を身につけろ」「音を嫌がるんじゃない」「青山辺りのおしゃれなカフェでお茶なんかしてんじゃねー、黒づくめになってライブを観に行け」と言うしかない。

 

時代は、お金を払ってでも演奏したい時代なんですよ、今の日本の場合。
そこに市場があるから、ライブハウスをやるのです。
ライブハウスは需要と供給という市場の原理に従って、経済活動をしているだけなんです。
観客はガラガラ、でもバンドはたくさん出演、バンドさんはお金払ってステージで気持ちよく演奏!
それで社会的な問題が発生していない限り、原理通りに動いているものは容認するしかないですよね。

それがダメと言っている人は、YouTubeを観るな、CDを買え、音源データを他人と共有するな、レンタルは利用するな、昭和時代の生活に戻れ、とお客さんに言ってるのと同じですね。
そんなの無理でしょ、どう考えても。

どうしても自分がそれに納得できないと言うなら、ご自身の思う「あるべき」ライブハウスをご自身でやったらいいんですよ。
市場の原理に逆らってまでも経営を成り立たせる能力がおありなら、是非やってみてくれたまえ!
それとも2009年の世界は、そんなにも今とは違う世界だったのだろうか(笑)?

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